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2020.04.24

【コラム】コロナ禍、二つの視点

コラム

 新型コロナウイルスの感染拡大は世界規模となり、「人類対ウイルスの戦争」という表現も決して言い過ぎではない状況にあります。

政府の、「自粛(自ら慎むこと)」「要請(強く求める)」という、突き詰めれば「自己責任」の行動制限を強いるやり方については、P店がセーフティネット(救済保証・融資制度)の対象から除外されていることもあり、色々と思う所はありますが、それでも、緊急事態宣言後、要請(=国策)のフェーズが、密閉・密集・密接を避ける「NO3密」から、外出を控える「ステイホーム」へと変化し、休業要請の対象・地域を拡げている点は、私もP業界に携わる立場として重く受け止めています。

※追記: 24日夕方、経産省より「セーフティネット対象拡大の方針」がリリースされ、ようやく対象となる方向


未知のものに対して過剰に怯えるのは生物の生存本能ですので、未知のウイルスの脅威に対してエビデンスがなくても決断していかなければならない状況を鑑みれば、人が大きく移動・接触するであろうGW期間の「ステイホーム」については十分理解できるところ。

このまま感染爆発に至らず、徐々に様々なデータの検証も進み、エビデンスある防疫環境・行動が確立されてくると、「ウイルスとの共生」を模索する段階に移行し、要請も解除・緩和されてくると考えられます。
それがGW明けになるのか、もう少し先になるのかはわかりませんが、そういった現状を踏まえてコロナ禍を捉える際には、二つの視点で分けて見ると良いと感じます。

<アフターコロナの視点>

 まず、新型コロナウイルスが終息した後、どのように社会が、世界が変化していくのか、そして自分達(P店)はどのように適応していくのか?という、一年以上先の長期的な『アフターコロナ』の視点。


「P店の閉店は加速する」・・・これはP店に限らず起こる事ですが、コロナ禍で打撃を受けた会社の倒産・事業縮小は避けられません。
これは、必ずしも体力のない中小企業に限らず、高コストなスキームで拡大路線を描いたところも含まれる為、傍目には元気なところが…という事もあると思われます。
台数規模の変化も想定される為、一概に店舗数で言えることではありませんが、3割減は決してオーバーな数字ではないと思います。


「ポジショニングの変化」・・・M&Aする側は選定物件が増えるので、資金力があれば優良物件を手中に収めやすくなり、業界再編も加速すると考えられます。
これは、必ずしも大手に集約されることを意味していません。
短中期的なポジショニングの変化としては、商圏内で閉店したP店の顧客流動先次第という事になりますが、長期的には、変化に素早く適応できた法人がその影響力を高めていくと考えられます。


「オンライン化が進む」・・・P店が足を運んで体験する「店舗型ビジネス」である点はこれからも変わりありませんが、バックヤードでは、Zoom等の通信会議・キャッシュレス・ペーパーレスなど、オンライン化が進むことになります。
これは何を意味するか?というと、今までローカルに留まっていた法人でも、しっかり仕組みを構築すれば、広域展開し易くなることにも繋がります。

<ウィズコロナの視点>

 そしてもう一つは、終息に時間が掛かる中で、新型コロナウイルス感染拡大防止行動を取りつつ、どのように営業活動を行なっていくのか?という短中期的な『ウィズコロナ』の視点。
営業に携わる立場では、こちらの方がイメージし易いと思います。


「広告宣伝自粛は当面継続される」・・・GW明けで緊急事態宣言が解除される・されないにかかわらず、GW明けに一気に世の中が晴れやかになるわけではありませんので、多少地域差はあるにせよ、広告宣伝自粛は当面継続されると考えるのが自然です。
※追記: 4月28日、全日遊連より各都道府県方面遊協に『広告宣伝自粛期間を5月31日まで延長』の連絡が為された
ユーザーのマインドは「出ないんじゃないか?」という疑いが通常より強い為、店内ではそれを瓦解する表現や独身男性向けに注力したアプローチが有効だと考えられます。


「安心・安全の体感」・・・多くのユーザーのマインドは、来店して頂いたとしても「罹患したくない」・「外出には気が引ける」・「生活に不安を感じている」などの思いをそれぞれ抱えており、本調子ではないことを理解する必要があります。
営業再開初期段階では「モノを売る為のアプローチ」よりも、「これだけ具体的に3密対策を行なっているのであれば…」という安心・安全の体感の方が重要で、単なる対策の提示ではなく、検温・マスク着用・手消毒入店、間引き営業、お客様が触れる箇所の定期清掃、朝の整列やカウンター・トイレ等でソーシャル・ディスタンスを確保する為の目印など、少しやり過ぎと思えるところからスタートした方が結果的に功を奏すると思われます。


「新台のポテンシャルは一段下がる」・・・勿論、全ての新台がというわけではありませんが、直近新台の挙動からもわかるように、「新しい」以外の魅力度が低い新台の場合は、アウトだけでなく支持率も芳しくない状況です。
「出ないんじゃないか?」のマインドの際は、ユーザーは定番機・多台数機により着座し易くなりますので、多台数導入する程ではない新台を少台数導入するぐらいなら、上期は実績機を5~6台単位でリバイバル導入して、少しでもメンテナンスを緩和した方が有効。
一方で、短時間滞在の割合も通常より高くなる為、勝負の早い高単価機も取り揃えたいところ。

<変化に適応を>

進化論で知られるチャールズ・ダーウィンの名言にこんな言葉があります。


『最も強いものが生き残るのではなく、最も賢いものが生き延びるのでもない。唯一生き残るのは、変化できるものである。』


これから、P店に限らず、多くの価値観が変わりリデザイン(再設計)されていきます。
それは、現時点で明確に道筋が示されているようなモノではありませんが、その変化に適応できたものにとって、未来は決して暗いモノではありません。


(文:小野真二郎)